純粋だから希望を持つことができる

医師の話では小児がんは初期、中期、そして老練期の3段階に分かれるらしいのですが、患者であるこどもがどの段階にいるかは、親の顔を見ればすぐにわかります。初期のこどもの親は不安や恐怖に打ちひしがれていますが、中期になると周囲を見渡す余裕が出てきます。そして老練期になると、親の顔にも明るさが見えてくる。これはこどもの治療に対する希望が伝染した結果だと私は思っています。こどもは大人と違って、純粋で医師の話をそのまま受け止めます。だからこそ希望を持つこともできるのです。私はそのことがとても大切だと思っています。一般に大人のがんと比べて小児がんの治癒率が高いのは、こどもには強い免疫力が備わっているからだといわれます。しかし私はこどもの場合は希望を持つことができるから、治癒する確率も高まっていると確信しています。
こどもががんになり、さらに治療によって障害が現れるとわかったことは私たちに大変なショックでした。初めはその事実を拒絶し、次に怒りを感じ、さらに絶望を経てようやく状況を容認することができたのです。最初から毅然と事態を受け止めていたわけではありません。ただ、よく小児がんの場合は本人よりも親のほうが大変だといわれますが、それは違っています。患者であるこどもたちはとても勇敢に病気と向かい合っています。たとえば私たちの病棟でも、治療の結果、足の切断を余儀なくされたこどもがカラカラと明るく笑いながら毎日を過ごしていました。医師を疑い、そのくせ、がんになっても酒やタバコをやめない大人よりも、こどものほうがずっとサポートしやすいと思います。