手術が有効な患者さんを絞り込むことが大切

胆のうは肝臓と接しているため、胆のうがんの手術では肝切除も同時に行われるのが普通。ただし、どこまで切除するかの決まりはない。そこで島津さんらは、胆のう動脈色素注入法で肝切除範囲を決めるようにした結果、以前より小さい範囲での切除にとどまるケースが増えたという。

ただし、胆管がん では、色素法を用いたセンチネルリンパ節生検や肝切除範囲の決定は今のところ難しいようだ。

「胆管がんは元々の成績が悪い。拡大手術をしたとしても予後がよくないのに、縮小手術をやれというのは、もう手術をやめろというのと同じです。しかし、胆管がんは非常にたちの悪いがんであり、手術だけでは治らないことが多いのもたしか。手術が有効な患者さんを絞り込むことも大事であり、そのような患者さんに対して、どれぐらい小さな手術ができるかの検討は必要でしょう」

胆管がんでも、肝切除の範囲を小さくする手術は試みられている。たとえば、肝門部胆管がんの場合、肝葉切除といって、肝臓を半分とる手術が標準手術だが、この手術に耐えられない患者さんが少なくない。肝臓の機能が悪い、高齢である、心臓や肺機能が悪い、という人たちだ。このような患者の場合、肝切除の範囲を可能な限り小さくする「肝実質温存手術法」という縮小手術が開発されている。

また、やむなく広い範囲の肝切除を行う場合は、切除する範囲の肝臓の血管(門脈)を遮断して、残す予定の肝臓の体積増加を図る「門脈塞栓術」という方法もある。

いずれにしろ、現段階の縮小手術はどんな患者さんにもというわけではなくて、標準手術ができない患者さんに対して行っているのが現状だ。

一方で東京医科大学八王子医療センターでは、胆管がんについて術後早期からの補助化学療法を積極的に行っている。その結果、5年生存率60パーセント以上という成績を上げているという。